クリスマスになると、東京の銀座通りにあるミキモト(宝石店)に大きなツリーがお目見えします。今では大規模なクリスマスのイルミネーションも珍しくありませんが、以前はこんな華やかなイルミネーションは珍しかったので、ニュースになったりしました。
今年、クリスマスの風景を何か描きたいと思いたち、ちょうど銀座に何度も行く用事があったので、ミキモトのツリーを入れた銀座の風景を描くことにしました。
◆取材写真
今回も写真を元に描きます。写真はなるべくたくさん、角度を変えたり、部分的にアップの写真を撮っておくと、あとで役に立ちます。
資料写真はこれ以外にもたくさん撮りました。全景の道路や歩道、車と人がうまい具合に入ってくれるようにチャンスをうかがって、撮影しています。
◆制 作
写真を選んだらトレースします。原寸大にプリントして、裏に濃い鉛筆を塗り、水彩紙に当てて輪郭をなぞれります。紙はファブリアーノクラシコ5、B3のパネルに水張りしました。
この絵は、マスキングインクを駆使して、ツリーのイルミネーションを表現してみようと思います。けっこう複雑なマスキングワークになります。
はじめに、塗り残したい小さなハイライトをマスキングインクでマスクします。ツリーの小さなライトの中心、ピカッと光っているところをまずマスク。ピカピカのボールやツリーの下にある雪だるまのライトもマスキングしました。今回、ツリーの赤いライトは、ハイライトと、その周りの赤い光と2重にマスクする予定です。
下の小さなツリーの葉っぱもマスクしました。こちらも薄いグリーンを塗ったあと、もう一度マスクを重ねる予定です。
ツリーの赤いライトを塗っていきます。たくさんあるので根気がいりますが、丹念に。キレイに丸く塗る必要はありません。あとでもう一度丸くマスキングして、ツリーをシルエットのように塗る予定なので、やや大きめの赤い●をハイライトの周りに描くようにします。
右下のツリーも薄いグリーン(ウルトラマリンとカドミウムイエローライトの混色)を塗りました。
ツリーの赤いライト、ハイライトをマスクしたあとに赤い絵の具で塗ってあるわけですが、ハイライトのマスクを中心にしてさらにもう一回り大きな丸を描くようにマスキングインクでマスクします。2重のマスキングになります。
手前の小さなツリー、絵の具が乾いたら、あとで濃いグリーンを塗り重ねたときに薄いグリーンが残るように、薄いグリーンの上を葉っぱのかたちにマスキングインクでマスクします。規則的にならないように、あまり考えすぎずに適当に描けばOKです。
このあと、画面右側のビルの壁面や人物などを描いていきます。
2009年12月21日
2009年12月23日
水彩画 メイキング 「MerryChristmasFromGinza」2
ツリーのマスキングが終わったところ。ツリー自体はビルの陰でほとんどシルエットにする予定です。ところどころ手前に突きでた枝に日が当たっているところは、緑色が見えるようにします。
続いて、右側のビルの壁面を塗りました。ここは全面コンクリートでホントは明るいグレーですが、光のイメージを表現したいので、ウェットインウェットで様々な色を置いてグラデーションにしました。クリスマスだから、光が欲しいと思ったのです。
さらに、冬だけど暖かい太陽の光が降っている感じを出すために、乾く前に塩を撒いて光の粒が散乱しているようなテクスチャーをつくりました。
右下の人物です。影と陰の部分を先に塗って、明るい光が当たっている感じにしました。ハイキーなトーンにすることによって、明るさを強調します。ローキーなトーンのツリーと対比させるためにも大事なところです。
ツリーの陰の部分を濃い色で塗りつぶします。これでツリーはほとんどシルエットのようになりました。部分的にビルの陰にとけ込んで輪郭が判らないところもあります。こんな風にツリーをシルエットにすると、赤いライトが強調されて、より強い表現になります。
赤いライトやツリーの枝の光ったところはマスキングしてあるので、手早く塗ることが出来ます。ツリーの緑色の部分を塗り残すようにして、乾いて境界線が出来てしまわないようにどんどん塗ります。
右下の人物に色を着けました。明るい光でまぶしく感じるくらいハイキーなトーン。
ツリーの後ろのビルや、手前の車にも彩色します。車のウィンドウには、ツリーとは反対側のビルが映り混んでいますが、フロントウィンドウの端にはツリーのイルミネーションが映り込んでいます。
このあと、車のボディやビルの壁面などを少しずつ描いていきます。
2009年12月24日
水彩画 メイキング 「MerryChristmasFromGinza」3
全景の車のウインドウです。映り込みを描き込んでいるところ。映り込みは、ぼんやりした模様じゃなくて、鏡に映ったようにはっきりとしています。透明なガラスなので映ったモノは鏡よりは暗くなります。また、車のウィンドウは湾曲しているので、映り込みも湾曲しています。
薄い色から描いても、濃い色から描いてもどちらでもかまいません。
左側のビルや車のボディなどを彩色して、ほとんど完成に近づきました。このあと、マスキングインクを剥がして、少し加筆します。
マスキングインクを剥がしたあと、ツリーの根元にある雪だるまのライトに彩色しました。
全体を見ると、右側の壁面がまだ単調。もう一回、壁を湿らせてウェットインウェットでテクスチャを描き加えることにしました。
マスクされていたツリーのボールも、表面に映り込みをちょっぴり描き加えてぴかぴか光った感じを出していきます。ツリーのグリーンの枝をもう少し濃くして、暗く沈んだところにもグリーンで少し枝を描き加えました。
ふつう、透明水彩では濃く暗い部分に明るい絵の具をのせても、透明なのであまり効果がありません。この、あとからのせたグリーンはカドミウムイエローライトとマンガニーズブルーの混色です。ガッシュやアクリルのようにほとんどペースト状の絵の具を塗っています。透明水彩でもペースト状の絵の具をちょっぴり使うと、絵に輝きを与えることが出来ます。
これで完成。お付き合いありがとうございました。
サイズ:420×297mm 紙:ファブリアーノクラシコ5 210kg 中目
使った絵の具:ウルトラマリンライト、バーントシェンナ、
カドミウムイエローライト、マンガニーズブルーノーバ(以上、ホルベイン)
パーマネントローズ(W&N)